EMC試験

放射エミッション用アンテナ【30MHz以上】

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前回の記事で、「30MHz以下」の周波数帯域に使用する放射エミッション試験用のアンテナを紹介しました。

放射エミッション用アンテナ【30MHz以下】放射エミッション試験で「30MHz以下」の周波数帯域で使用されるアンテナ(ロッドアンテナ、ループアンテナ、ラージループアンテナ)の概要について紹介しています。...

今回の記事では「30MHz以上」の周波数帯域で使用するアンテナについて紹介します。

 

バイコニカルアンテナ

  • 周波数帯域:30MHz~300MHz
  • 測定対象:電界
ETS製バイコニカルアンテナ 出典:TechEyesOnline

バイコニカルアンテナは「CISPR11」をはじめ、各種の放射エミッション試験で使用されるアンテナです。

アンテナマストに設置し回転させることで、水平偏波と垂直偏波、両方の電界強度を測定することができます。

バイコニカルアンテナの語源は、バイが「ふたつの」、コニカルが「円錐のような」というところから来ています。

つまりふたつの円錐の形をしたアンテナということになります。

円錐形とすることでダイポールアンテナと比較して広帯域で使用できるアンテナとなっています。

ETS Rindgren社の「3110C」やSchwarzbeck社の「BBA9106」あたりが、最もメジャーな型式かと思います。

shwarzbeck製バイコニカルアンテナ 出典:ノイズ研究所

バイコニカルアンテナには「バラン」が使用されています。

バランとは、同軸線路(不平衡)とアンテナ(平衡)を変換するための部品で、は巻線比を変えることでインピーダンス変換をすることもできるため、高周波回路の様々な場所で利用されています。

(バラン [balun] の語源は平衡 [balanced] と不平衡 [unbalanced] の頭文字に由来します。)

 

 

ログペリオディックアンテナ

  • 周波数帯域:200MHz~1000MHz
  • 測定対象:電界
shwarzbeck製ログペリアンテナ 出典:ノイズ研究所

ログペリオディックアンテナもバイコニカルアンテナと同様に「CISPR11」をはじめとした、各種の放射エミッション試験で使用されるアンテナです。

一般的には「ログペリアンテナ」と呼ばれ、アンテナマストに設置し回転させることで、水平偏波と垂直偏波、両方の電界強度を測定することができます。

ログが「対数」、ペリオディックが「周期性」という意味からわかるように、アンテナのエレメント長が対数周期で共振するように設計されています。

対数周期であるため、広帯域で使用することができるアンテナです。

バイコニカルアンテナと同様にETS Rindgren社とShwarzbeck社のものがよく使用されています。

ETS Rindgren製ログペリアンテナ 出典:アステック

ログペリアンテナの動作原理や設計方法については、RFワールドNo.42「超広帯域特性をもつ代表的なアンテナの動作原理から実例まで」にて解説されています。

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興味のある方はチェックしてみてください。

 

バイログアンテナ

  • 周波数帯域:30MHz~1000MHz
  • 測定対象:電界
shwarzbeck製バイログアンテナ 出典:ノイズ研究所

 

バイログアンテナは前述の「バイコニアンテナ」と「ログペリアンテナ」を組み合わせたアンテナです。

2つのアンテナが組み合わさっていることから「ハイブリッドアンテナ」とも呼ばれます。

このアンテナの特徴はなんと言っても「広帯域」なことです。

1GHz以下の放射エミッション試験で要求される測定帯域「30MHz~1000MHz」をひとつのアンテナで測定できるため、測定時間を大幅に短縮することができます。

アンテナの特性としてはいくつか短所はありますが、それを補って余りあるメリットがあるため多くの試験所で使用されています。

放射エミッション試験に使用できるアンテナの詳細については、「CISPR16-1-4」の4.5.2で規定されているのでチェックしてみてください。(国内答申

バイログアンテナは前述のShwarzbeck製の「VULB 9160」がよく使用されています。

 

 

ダブルリッジドガイドホーンアンテナ

  • 周波数帯域:1GHz~6GHz
  • 測定対象:電界
ETS Rindgren製ホーンアンテナ 出典:TSJ

 

ダブルリッジドガイドホーンアンテナ、長い名前なので一般的には「ホーンアンテナ」と呼ばれます。

ホーンアンテナは、導波管の先端を角笛(ホーン)状に連続的に大きくしてできたアンテナです。

波管の特性を改良したものなので、電波の位相が揃っており、ゲインや指向性の高いアンテナを実現することができます。

ただし大型のホーンアンテナになると、中央部と端部の位相が揃わず波面が円状に近づくため、一般的には大型化に向いていないと言われています。

ホーンアンテナは設計の容易さから様々な分野で使用されています。

解説資料もいくつかネット上でも公開されているので、興味のある方はチェックしてみてください。

電子情報通信学会『知識の森』

EMC試験用の代表的なものとしては、前述のETS Rindgren製のほかに、Shwarzbeck製のBBHA9120があります。

Shwarzbeck製ホーンアンテナ 出典:ノイズ研究所

 

おわりに

30MHz以上の周波数帯域で使用される放射エミッション試験用アンテナ(バイコニカルアンテナ、ログペリオディックアンテナ、バイログアンテナ、ホーンアンテナ)を紹介しました。

ホーンアンテナは少し形状が異なりますが、その他のアンテナはすべてエレメントが棒状になっています。

つまり原理はダイポールアンテナと同じです。

ダイポールアンテナに関しては、その特性を計算で簡単に求めることができます。

 

EMC試験からは少し離れますが、陸上無線技術士の試験でもよく目する問題です。

http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H18/html/H1808A19_.html

ホーンアンテナに関してもよく試験に出題されます。

http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H15/html/H1504A20_.html

 

陸上無線技術士の資格は、無線分野に興味がある方にはオススメの資格です。

試験の難易度はかなり高いですが、挑戦して見る価値のある資格です。

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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