この記事では、100円ショップで販売されている分配器の内部構造について解説しています。
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調査対象
今回は、オーディオ用とテレビ用で合計3つの分配器を分解します。
オーディオ用のものは、ダイソーで売られている「イヤホンスプリッター」で、2人で同時に音楽を視聴するときに使用するものです。
テレビ用の分配器は、フレッツという100円ショップで 300円で購入したものです。この分配器は、通電のあり・なしによって 2つの種類に分かれています。
イヤホンスプリッター
このイヤホンスプリッターは、プラスチックの筐体なのですが、継ぎ目のような部分はなかったので端子の部分から取り出します。
かなり強力に固定されているようなので、熱を掛けて、端子の部分から押し出してみると、ケーズと中身が分解されました。
ただし中身の回路については、防水や固定のためにシリコンが充填されているため、この状態では確認できません。そのため、同じように熱をかけながら少しずつシリコンを剥がしていきます。
最終的に配線が切れてしまったので分かりづらいのですが、分岐配線をパッケージングして
いるだけのようでした。
つまり、このイヤホンスプリッターは分配器と呼ぶような回路は搭載されておらず、単純に配線を2つの端子に分岐しているだけでした。
TVアンテナ混合分波器
次に 1端子通電形のテレビ用分配器を分解します。このテレビ用の分配器は、「TVアンテナ混合分波器」というものです。
分波器は単純に信号を2つに分岐するのではなく、周波数によって信号を分岐するためのもので、衛星の放送波と地上波を2つに分離したり、あるいは混合器として 2つのアンテナを接続できます。
分解作業
非常に薄い金属でケーシングされており、ここでは裏面に蓋から分解していきます。
この蓋については、簡単に取り外せないように外周に渡ってコーキングされています。
そのため、ここでも熱を掛けながら作業を進めます。少し隙間が空いたところで、ニッパーとカッターをねじ込んで蓋を取り外します。
この時点でいくつかの部品が見えますが、裏面も確認したいので更に分解を進めます。
金属のケースは薄いとはいえ、中々取り外すことができず、またケースから出たピンに基板がはんだ付けされています。
そして1時間ほど掛かって、ようやくケースを取り外すことができました。基板の外観としては、少し割れていたり、一部部品が取れてしまったりしたのですが、回路自体はぎりぎり確認できるレベルです。
回路構成
分波器の回路は、コンデンサを直並列に接続することでバンドパスフィルタが構成されています。
直列にコンデンサを接続することでハイパスフィルタとして機能させつつ、並列に接続したコンデンサがローパスフィルタとして機能することで、特定の周波数だけを取り出すバンドパスフィルタを実現しています。
一般的なバンドパスフィルタは、コンデンサとコイルを組み合わせることが多いですが、この分波器は小型化あるいは低コスト化のためにコンデンサだけのバンドパスフィルタが実現されています。
また通電のあり・なしの違いとしては、バンドパスフィルタと並列にコイルが接続されているかで分かれています。
通電ありにおいては、直流電圧をバイパスするために端子間にコイルが接続されており、このコイルによって高周波成分をカットすることができます。
テレビ用分配器
この分配器は、壁面のアンテナ端子から来る信号を2つのテレビに分配するためのものになります。対応周波数としては、10MHz ~ 3.2GHzです。
分解手順は先ほどと同じなので、省略します。
基板の外観は分波器とはかなり違っており、表面にダイオードとトランスが使用されていることに加えて、裏面にもコイルが3つ実装されています。
回路については、信号ラインと電源ラインで分けて確認します。
信号ライン
信号ラインの回路は、入力側のコンデンサによって直流がカットされた後に、タップ付きのトランスによってインピーダンス変換が行われています。
このインピーダンス変換用のトランスは、入力と出力間のインピーダンスマッチングを取るためのもので、2分配の場合は巻線比は √2:1 となります。
インピーダンスマッチングの考え方
例えば50Ω系においては、出力側のインピーダンスが 100Ωとなり、トランスの中点のインピーダンスは 100Ωの 1/4の値、つまり 25Ωとなります。
この25Ωに対して、入力側のインピーダンス 50Ωとインピーダンスマッチングさせるために、1つ目のトランスの巻線比を √2:1 とします。
電源ライン
電源ラインの回路図です。
3つのコイルとコンデンサは、高周波をカットする働きを持ち、さらに直流の電源が逆流しないように直列にダイオードが接続されています。
そして、全ての部品を同じ回路図で表します。
分波器よりも部品点数が多く、また回路自体も複雑になっていることがわかります。
用途が異なるため一概に比較する事はできませんが、同じ価格であっても部品コストや実装の手間などにかなりの差がありそうな結果と言えます。
おわりに
今回は 100円ショップで販売されている分配器の分解調査を行いました。
実際に分解してみると、商品ごとに内部の構成にかなり大きな差がありましたね。
ちなみに分配器の原理については、こちらの記事で解説しています。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。