アリエクスプレスでは激安の高周波部品が数多く販売されていますが、今回はアッテネータを購入してみました。
価格はなんと 250円!!
ということで、そんな激安アッテネータが実用レベルで使えるのかを調べてみました。
動画はこちら↓
対象商品
今回購入した商品は「DC 4.0GHz RF Radio Frequency Fixed Attenuator Maximum power 23dBm SMA Double Female Head 0dB 10dB 20dB 30dB」というもの。

現在は販売されていないようですが、同じような商品がアリエクスプレス上には数多く存在します。
ちなみにアマゾンでも同じようなものが販売されていますが、こちらはやや割高です。
一応公式のスペックとしては以下の通りです。
- 動作周波数:DC-4.0GHz
- ハイパワー:23dBm(200mW)
- VSWR:≤1.20基準インピーダンス:50Ω
- ストレート:0dB(参考)
- アッテネータ 1:10±0.8dB
- アッテネータ 2:20±1.1dB
- アッテネータ 3:30±1.5dB
作りとしてはお世辞にも品質が良いとは言えませんが、簡易的な実験に使う程度であれば
問題ないだろうということで購入した次第です。

評価方法
アッテネータの減衰量は NanoVNAを使って測定します。

このアッテネータには 0dB、10dB、20dB、30dB の合計4種類の減衰回路が実装されていますが、それぞれの実際の減衰量(S21)を測定します。
測定は、各回路の両端に同軸ケーブルを接続するだけなので非常に簡単です。(一部のコネクタが若干接続しづらいことがあったので、使用している部品の品質については価格相応を考えたほうが良いかもしれません)
肝心の性能についてですが、実際の減衰量は基板に記載されている減衰量と概ね一致しており、10MHzにおいて比較すると±1dB程度の精度となっています。

この±1dB というのをどのように評価するかについては、用途によって変わってきますが、少なくともホビーユースとして考えると十分な精度と思います。
ちなみに1GHz近辺で減衰量が上下していますが、アッテネータの仕様ではなく、NanoVNAの性能や測定時の反射による影響であるため、無視していただいて構いません。
分解調査
アッテネータがどのような回路・部品で構成されているかを調べてみます。
使用されている部品については、部品に表記されている数値から読み解くこともでき、例えば 101 の場合は 10×101 で 100Ω 、330の場合は 33×10 0 つまり33Ωという意味になります。
ただし今回は実際に部品を取り外してテスターにて抵抗値を測定してみます。




調査結果
実際に抵抗値を測定した結果、それぞれの回路は下図のようになりました。

実際にこの回路で減衰量をシミュレーションしてみると、測定した結果と同じように
それぞれの減衰量が 10dB, 20dB, 30dBとなっていることが確認できます。


設計方法
アッテネータはそ、高周波回路においては過入力を防止したり、VSWRを改善したりするために使用されます。
そしてアッテネータの構成としては、大きく T型 と π型 に分類することができ、それぞれ Tの文字、あるいはπの文字に似た抵抗回路を組み合わせることで、規定の減衰量が得られるようになっています。

抵抗の組み合わせについては、基本的にはオームの法則に基づいて計算可能であるため、減衰量を決めてしまえばあとは一意に定数を決定することができます。
また無料の回路シミュレータ QucsStudioを使用すると、アッテネータを設計するための
専用のツールが準備されているため、簡単にアッテネータ回路を設計することができます。

設計にあたって注意すべき点としては、回路の入出力のインピーダンス、いわゆる基準インピーダンスを考慮する必要があるということです。
高周波用のアッテネータにおいては、基準インピーダンスが 50Ωで設計されていますが、その他のインピーダンス系で使用する場合には抵抗値が変化させる必要があります。
とはいえ、多くのアッテネータの設計ツールは、基準インピーダンスが入力できるようになっているため、間違えることは少ないかと思いますが、基準インピーダンスによって減衰量が変化するということは覚えておいてください。
おわりに
今回はアリエクスプレスで格安に販売されているアッテネータの「性能」と「回路構成」について解説しました。
格安のアッテネータ自体は、精度としてはそれほど高くありませんが、ホビーユース程度であれば十分実用に耐えうるものと思います。
またアッテネータの設計方法については、設計ツールを使用することで比較的簡単に規定の減衰量のものを設計できるため、機会があればぜひチャレンジしてみてください。

今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。