EMC試験で使用する電波暗室。
一見同じような「見た目」ですが、実はそれぞれ特性は異なります。
電波暗室の特性の違いについては、規格(例えばCISPR16など)で許容差が設けられており、その範囲内に収まる電波暗室でなければEMC試験に使用することができないこととなっています。
そこで今回の記事では、EMC試験で使用するための「電波暗室の評価方法」について紹介します。
電波暗室の評価方法の分類
電波暗室の評価方法は「目的」「周波数」「用途」によって分類されます。
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「シールド効果」は規格で規定されているわけではありませんが、放射イミュニティ試験などにおいて、電波法に規定されている空中線電力以上の電波が外部へ漏れないように把握しておく必要があります。
「反射・減衰特性」はCISPR規格において評価方法、及び許容差が規定されています。
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シールド効果の評価
シールド効果は、外部から侵入するノイズ、あるいは内部から外部へ漏えいする電波がないかを規定するための評価です。
評価方法の規格としては「MIL-STD-285」が一般的です。
MIL-STD-285では、電波暗室の壁面に対してアンテナを対向させて「シールド効果」を測定します。
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一般的な電波暗室においては、おおよそ「100dB」程度のシールド効果を持つように設計されることが多いです。
シールド効果の考え方については「電磁波シールドの原理」にて解説しています。
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反射・減衰特性の評価(1GHz以下)
エミッション試験において供試品(EUT:Equipment Under Test)から放射されるノイズが、受信アンテナに到達するまでにどの程度減衰するかを規定するために「反射・減衰特性」を評価します。
このとき評価方法は、周波数が「1GHz以下」か「1GHz超」かで分類されます。
1GHz以下においては、そこから更に用途(民生用か車載用か)によって評価方法が「NSA:Normarized Site Attenuation」か「ロングワイヤ法」かに分類されます。
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「NSA」も「ロングワイヤ法」もそれぞれ、EUTから受信アンテナまでの理論的な減衰値に対して、実際の電波暗室の特性が規定された範囲内に収まっているかを評価します。
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NSAに関しては、測定の注意点などをまとめています。
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反射・減衰特性の評価(1GHz超)
1GHz超の場合は、「SVSWR:Site Voltage Standing Wave Ratio」法で電波暗室の特性を評価します。
SVSWRは名称の通り、サイトのVSWR(電圧定在波比)を評価する試験です。
電波暗室のテストボリューム内で少しずつ位置をずらしながら、送信アンテナと受信アンテナ間の伝搬特性(S21)を測定します。
SVSWR法では理論値は規定されておらず、各測定ポイントでの最大値と最小値の差分からVSWRを算出し、規定の範囲内に収まっているかどうかを評価します。
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おわりに
EMC試験で使用するための「電波暗室の評価方法」について紹介しました。
今回紹介した評価方法の規格は以下のリンクから確認できます。
MIL-STD-285: https://www.mod.go.jp/atla/nds/C/C0012B.pdf
NSA、SVSWR法
(CISPR16-1-4): https://www.mod.go.jp/atla/nds/C/C0012B.pdf
ロングワイヤ法(CISPR25 Annex J ):JSAウェブサイト(有料)
電波暗室に関連するその他の情報も紹介しています。
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是非チェックしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。