昨今の半導体不足は、その影響が様々な業界・業種へ波及していますが、電子機器の設計者にとって悩ましいポイントは、どの部品を使用すべきか判断することにあります。
そんな中、この記事では Altium Designerの ActiveBOMを使用した電子部品のリスク管理方法について紹介します。
動画はこちら↓
Altium Designerとは
Altium Designerは、日本では少し馴染みが薄いかもしれませんが、欧州の自動車メーカーやアメリカの大手IT企業でも採用されている基板設計用のソフトウェアです。

もともとは Protelという基板設計ソフトから進化したもので、一般的な基板設計の機能を
備えているのはもちろんのこと、最近ではリモートワークに最適化された Altium 365というクラウドサービスも展開しています。
そして、Altium Designerの機能の中で最近最も注目を集めているのが、今回紹介する Active BOMの機能です。

BOMとは
BOMというのは「Bill Of Materials」の頭文字を取ったもので、日本語では部品表のことを言います。

Altium Designerに搭載されている「ActiveBOM」においては、Digi-key や Mouserなどのディストリビュータが保有している部品の在庫状況を確認でき、かつ代替部品も迅速に検索できるようになっています。
従来のBOMの問題点
部品表については、設計段階でリスト化したもののメンテナンスされていないために、いざ部品を調達しようとすると実際には手に入らないなんてことが起こります。

※設計者は部品調達に気を遣わなければならないことは頭では理解しつつも、技術的な問題ではないため後回しにしがちです
この場合、設計者が再度部品選定をやり直すことになり、開発にかかる工数を逼迫することに繋がります。
ActiveBOMとは
このプロジェクトは、Altiumが WEBに公開しているチュートリアルをもとに作成したものです。
チュートリアルの解説記事はこちら↓

部品の入手ランク
BOMを見てみると、この回路は 5種類の部品で構成されていて、それぞれの部品に関する情報が表示されています。

この中で例えば 1番上のコンデンサを選択すると、「KEMET製」「22nF」「耐圧 16V」「0603」で、さらに各ディストリビューターのストック状況と価格が表示されています。

このディストリビューター情報は色によっておすすめ度合いが識別されており、緑が Best、橙が Acceptableとランク付けされています。
ただしこのランク付けは、必ずしも全ての方にとって最適ではないので、自身でランクを変更することも可能です。
部品選定
設計時の部品選定においては、Altium Designerの Manufacture Part Searchという機能を使います。
Manufacture Part Searchでは、使用する部品の「スペック」や「型式」でソートすることが可能で、ライフサイクルや部品モデルの有無などをもとに部品が選べます。

例えば、部品のライフサイクルは棒線の色によって識別されており、緑色が 現在製造中、、橙色が 新規設計に非推奨、赤色が 製造終了品を意味します。



つまり、設計時に部品のライフサイクルが終了しているもの、あるいは終了が予定されているものを避けておくだけでも、ある程度安心して部品が選べます。
またディストリビューター情報も表示されているので、部品の在庫状況や価格をもとにして最適な部品を検討できます。

代替部品の検索
ある部品が入手困難になった場合、Altium Designerでは部品のマッチング度合いをもとにして代替部品を選定できます。

各部品に対して、代替候補となる部品がランク付けされており、いざというときもこのリストをもとにして代替部品を探すことができます。
もちろんすべての部品に対してマッチングが機能するわけではありませんが、昨今の部品供給の事情を考えると、この代替部品のリコメンド機能だけでも Altium Designerを使う価値があるかと思います。
Altium365の活用
ここまでは設計者の観点で ActiveBOMの利点を紹介しましたが、Altium Designerでは Altium365(クラウドサービス)を活用することで、他の担当者と進捗状況や部品の選定状況を共有できます。

このクラウドサービスでは、回路やプリント基板の設計情報はもちろん、BOMのデータも一括して共有できます。
そして BOMについては、対象の部品をクリックすることで Octopart のページへ移動し、 Altium Designerに表示されているディストリビューター情報などを、Webブラウザのみでシームレスに確認できます。

情報共有のために専用のソフトウェアを使用しないというのは、様々な方を巻き込んで仕事を進めていくのには非常に重要なことです。
自社内での情報共有はもちろんですが、設計委託や製造委託している場合にも非常に便利な機能なので、ぜひ活用してみてください。

おわりに
今回は昨今の部品供給事情も踏まえて、Altium Designerに搭載されている Active BOMの機能について紹介しました。

これからプリント基板設計をはじめるのであれば、 Altium Designerは機能が豊富に揃っているので非常におすすめできるソフトウェアです。
ソフトウェアの詳細については、以下のリンクから確認してみてください。
無料のトライアルがあったり、月額のサブスクリプションサービスがあったり、試しに使ってみるには最高の環境と言えそうです。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。