前回の記事では、雷サージ対策部品の種類、分類について紹介しました。
今回は雷サージ対策部品のうち、「バリスタ」と「アレスタ」の使い分けについて考えてみます。
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バリスタとは
まずは「バリスタ」とは何かというとところから。
バリスタは Variable Resistor (バリアブル レジスタ)の略で、電圧によって抵抗値が可変する半導体素子の一種です。
バリスタの特性
上図においては、一定の電圧(200V)を超えるまでは電流がほとんど流れません。
しかし、一定の電圧(200V)を超えると抵抗値が急激に低下し、電流が流れはじめるとともに、電圧は一定に保たれます。
バリスタ電圧
バリスタ電圧の定義は、1mAの「電流」を流すときにかかる両端にかかる「電圧」です。
回路電圧によってバリスタを選定しやすいように、各メーカーからはバリスタ電圧ごとに部品がシリーズ化されています。
バリスタ電圧と材料の厚みは比例関係にあるため、バリスタ電圧が高いほど材料の厚みは大きくなります。
寄生容量
またバリスタは寄生容量を持つため、バリスタ電圧以下の領域においてはコンデンサとしての機能します。
コンデンサとして機能するということは、つまり「漏れ電流」が発生するということです。
寄生容量はバリスタの素子径の2乗に比例し、バリスタ電圧が低いほど大きくなります。
電源ラインで使用する場合においては、電気用品安全法などによって漏れ電流の大きさが制限されているので、設計時に注意してください。
具体的なバリスタの選定方法は、JEITAの資料(23ページから)などが参考になると思います。
アレスタとは
アレスタとは、いわゆる「避雷器」です。
両端の電極間にギャップを設けて、サージ電圧を放電させることで雷サージのエネルギーを吸収します。
アレスタの特性
アレスタの特徴としては、漏れ電流が小さいことが挙げられます。
また電流容量も大きいため、バリスタよりも大きな雷サージ電圧にも対応できます。
注意事項
一方のデメリットとしては、電流が一度流れ始めると電流を流し続ける性質「続流」が挙げられます。
続流の状態に陥ると、大地に電流が流れつづけます。
いわゆる「漏電」した状態です。
このためアレスタは単体で使用することは難しく、バリスタと組み合わせて使用することが一般的となります。
バリスタとアレスタの使い分け
バリスタとアレスタの使い分け方について考えてみます。
まずは、雷サージの電圧(エネルギー)が大きいか、小さいかによって分かれます。
サージ電圧が小さい場合は、バリスタのみで構成します。
サージ電圧が大きい場合は、バリスタにアレスタを組み合わせます。
アレスタによって大きなサージ電圧のエネルギーを吸収しつつ、バリスタによって続流を抑制します。
おわりに
雷サージ対策部品の「バリスタ」と「アレスタ」の特徴をもとに、それぞれの使い分けについて解説しました。
まずは知識として、それぞれの違いを知っておくことが大切です。
バリスタとアレスタの詳細に関しては「サージ対策入門と設計法」が参考になります。
この書籍では、アレスタメーカーの「三菱マテリアル」のエンジニアが、雷サージ対策に関するノウハウを解説しています。
雷サージ対策部品の「使い分け」だけでなく、回路(電源回路、通信回路、アンテナ回路など)ごとに「対策ノウハウ」が解説されており、実践で役立つ知識が満載です。
今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。