この記事では RIGOL製 DHO1204を用いて、オシロスコープの基本的な使い方を解説しています。
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オシロスコープの基本スペック
今回は RIGOLのDHO1000シリーズのオシロスコープを使って操作方法を解説します。
今回使用する「DHO1204」のスペックは以下のとおりです。
- チャンネル数:4CH
- 周波数帯域:200MHz
- サンプリングレート:2GS/s
- 垂直分解能: 12bit
オシロスコープは用途に応じて必要となるスペックが異なるので、用途に合わせて適切なモデルを選択してください。
なおこれらのスペックの意味については、以下の記事で解説しています。
オート測定
オシロスコープの操作方法がわからないときに便利な機能として「オート測定機能」があります。
オート測定機能は、オシロスコープ本体が自動で電圧範囲や時間範囲を設定してくる非常に便利な機能ですが、マニュアル操作で設定できるようになれば更に深くオシロスコープを使いこなせるようになります。
3つの基本操作
マニュアル操作では以下の3つの項目を操作します。
- 垂直軸操作(電圧設定)
- 水平軸操作(時間設定)
- トリガー操作(タイミング設定)
、これら3つのパラメータを順番に操作すれば大抵の信号は測定できます。
垂直軸操作
電圧にかかわる垂直軸の操作では「電圧範囲」と「オフセット電圧」を設定します。
大抵のオシロスコープでは「Vertical」で囲われている2つのノブを操作します。上側が「オフセット電圧」、下側が「電圧スケール」を調整するためのノブです。
垂直軸操作における注意点
観測対象の波形が画面全体に収まるように「電圧スケール」と「オフセット電圧」を調整します。
この理由は、画面全体の電圧範囲に対してオシロスコープの垂直分解能が割り当てられるためです。
つまり画面の上側の範囲だけに波形を表示させていたとすると、オシロスコープが持つ本来の垂直分解能に対して半分の精度でしか測定できません。
そのため特別な理由がなければ、画面全体に波形が表示されるように「電圧スケール」と「オフセット電圧」を調整しておくべきです。
水平軸操作
時間に関わる水平軸については、時間範囲の設定を行います。
時間範囲は「Horizontal」で囲われている2つのノブを使って設定し、下側のノブで「時間スケール」を調整しつつ、上側のノブで「オフセット時間」を調整します。
水平軸操作における注意点
水平軸の設定については、時間スケールの設定によってサンプリング周波数が変わってしまうことに注意する必要があります。
サンプリングレートの変化度合いはオシロスコープの機種によって異なりますが、基本的に時間スケールが小さくなるほどサンプリングレートが高くなります。
この理由はオシロスコープのレコード長に制限があるためです。
そのため信号波形を長時間測定したい場合にはサンプリングレートが低くなってしまう、つまり高速な信号は測定できないと理解しておくべきです。
トリガー操作
トリガーとは波形を測定するための「きっかけ」を規定するもので「トリガーレベル」と「トリガータイプ」の2つを設定する必要があります。
操作パネルの「Triger」で囲われた中のノブを使ってトリガーレベルを変更できます。
ノブを回すとオレンジ色の点線が上下に移動し、このトリガーレベルをきっかけにして測定が行われます。
トリガータイプはトリガーをかける条件を設定するためのもので、Trigerボタンを押し込むことで各種設定を行えます。
最も一般的なトリガータイプは「エッジトリガー」と呼ばれているもので、信号波形がトリガーレベルを遷移したタイミングで測定を行います。
このエッジトリガーについては信号の立ち上がり(Rising)、立ち下がり(Falling)、または立ち上がりと立ち下がりの両方(Either)の3つのパターンから選択できます。
基本的には立ち上がりエッジ(Rising)を選択することが多いですが、用途に合わせて選択すれば問題ありません。
基本操作まとめ
ここではオシロスコープの基本操作として「垂直軸」「水平軸」「トリガー」の3つの項目の設定方法について紹介しました。
はじめのうちは、ボタンの位置や設定内容で戸惑ってしまうこともあるかもしれませんが、焦らず1つずつ操作すれば必ず正しく波形を表示できます。
「脱オート測定」を目指して、ぜひ色々と触ってみてください。
プローブの使い方
次は測定に欠かせない「電圧プローブ」の使い方について解説します。
電圧測定の基本
オシロスコープに限りませんが、電圧測定における基本的な事項として「回路の動作に影響を与えないこと」が挙げられます。
例えば動作している回路に対して並列に抵抗を接続すると、この抵抗にも電流が流れることによって回路の動作が変わってしまいます。
つまりもとの回路の動作状態を測定できていないということです。
そのためオシロスコープをはじめとして、電圧を測定する計測器においては入力インピーダンスが高くする必要があり、測定に使用する電圧プローブにおいてもこの考え方が重要になります。
オシロスコープの入力回路
オシロスコープ本体は入力インピーダンスが 1MΩで設計されていますが、減衰比の大きいプローブを使用することでより高い入力インピーダンスで測定できます。
一般的な受動プローブでは減衰比が 10:1となっています。つまり入力信号が 1/10の大きさでオシロスコープ本体に入力されるということです。
信号減衰によるメリット・デメリット
この信号の減衰については測定上のメリットとデメリットどちらも存在します。
メリット
信号を減衰するためにプローブ内部で抵抗が直列に接続されていますが、この直列接続された抵抗によってオシロスコープの入力インピーダンスが高くなります。つまり測定回路の影響をより小さくできます。
またプローブの減衰比が大きいほど周波数帯域も広くなります。今回使用するプローブは減衰比を 10:1(x10)か 1:1(x1)かに切り替えられるようになっています。
ここで減衰比の大きい 10:1を選択することで、周波数帯域が広くなります。
また減衰比を大きくすることで、高電圧の回路も測定できるようになります。
デメリット
一方で減衰比を大きくするデメリットとしては、測定感度が低下することが挙げられます。
これは特に微小レベルの信号を測定するとき顕著で、1LSBあたりの分解能よりも小さいレベルになってしまうと、ノイズに埋もれて正しい値を測定できなくなります。
そのためすべてのケースにおいて減衰比を 10:1にしておくべきとは言えませんが、多くの場面においては入力インピーダンスが高いことのメリットのほうが大きいです。
減衰比の設定
なおこのオシロスコープの機種によっては、プローブの減衰比に合わせて本体の設定を変更する必要があります。
設定方法は「Vertical」の設定ウィンドウから「Probe」ボタンをタップします。
するとプローブのチャンネルごとに減衰比(Attenuation)が設定できるようになっているので、プローブの設定に合わせて減衰比を選択します。
減衰比が正しく設定できていないと、垂直軸の値が正しく表示されないので注意してください。
周波数特性の補正
プローブには寄生容量と呼ばれるコンデンサ成分が存在します。
このプローブに存在する寄生容量は高周波信号を減衰させてしまう働きがあるため、それら寄生容量の影響を補正するためにトリマ・コンデンサが内蔵されています。
プローブ尖端のつまみを回すことでトリマ・コンデンサの静電容量が変化するようになっており、それによって周波数特性を補正することができます。
回す方向によって波形がなまったり、鋭角になったりすのできれいな矩形波となるように調整してください。
なお周波数特性の補正は、測定で使用するすべてのチャンネルで実施する必要があります。また補正する頻度については、正しい測定をするためにも毎回確認しておくことをおすすめします。
おわりに
今回はオシロスコープの基本操作について解説しました。
ここでは RIGOL製 DHO1204を使って操作方法を解説しましたが、操作の考え方はどのオシロスコープを使っても同じなので参考にしてみてください。
また DHO1000シリーズの応用的な機能については、以下の記事で解説しています。
興味があればこちらの記事もチェックしてみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
12bitとしては最安級のオシロスコープですが、RIGOLに始まり今はSIGLENTにも及んでいるようです。RIGOLでSIGLENTの差も投稿していただけると嬉しいです。