電波は有限資源であるため、各国とも有効活用のために周波数帯によって利用用途が規定されています。
そこで今回の記事では、EMC試験に関わる代表的な周波数バンドについて紹介します。
周波数バンドのキホン
周波数帯域ごとの名称は、総務省のページにまとめられています。
https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/summary/
波長が10倍、または1/10になるごとに名称が変わります。
このうちEMC試験に関わるのは「9kHz~40GHz」なので、「超長波からミリ波」までを対象とした規格が存在することになります。
(高い方の周波数でいえば6GHz以上はあまり試験される機会はないので、実質はマイクロ波までですが。。。)
これらの周波数帯域において、実際にEMC規格で妨害とならないよう意識されている周波数バンドについて、自動車を例に見ていきましょう。
EMCに関わる周波数バンド
AM帯
まず代表的な周波数バンドとして挙げられる「AM帯」です。
AMラジオ放送が身近な存在としてあるので、誰もがご存知ですね。
AMラジオ放送の周波数帯は「526.5kHz ~ 1620kHz」と規定されています。
この帯域のノイズはAMラジオに干渉することから、「ラジオノイズ」と呼ばれます。
ラジオノイズは、DC/DCコンバータやモーターなどの電源回路やインバータ回路から発生することが多いです。
ハイパワーのノイズであるため、対策に苦慮することも多い印象です。
CISPR25においては、ロッドアンテナを使用して放射エミッション試験が行われます。
これは実際の車両に取り付けられたアンテナを模擬しているためです。
周波数が低いので放射と言えるのかは微妙ですが、空間から伝搬するノイズを評価する試験と考えるのが妥当でしょう。
FM帯
AMと来れば次は「FM」ですね。
こちらも用途は、わかりきっていますがFMラジオ放送です。
周波数帯は、国によって若干異なりますが「47MHz ~ 108MHz」です。
CISPR25では、バイコニカルアンテナを使って放射エミッション試験が行われます。
このあたりの周波数から、ようやく近傍界から抜けてくるので放射ノイズと呼べるのでしょうか。
ISMバンド
工業・科学・医療用に使用が許可されている周波数バンドです。
ISMは「Industry Science and Medical」の略語です。
ISMバンドは1つのバンドを指すのではなく、複数の周波数帯域をまとめてISMバンドとして扱っています。
代表的なものとしては、以下のようなものがあります。
- 6.78MHz ワイヤレス給電
- 13.56MHz RFID
- 27.12MHz IH調理器
- 40.68MHz プラズマ発生装置
- 400MHz帯 スマートキー
- 900MHz帯 スマートメーター
- 2.4GHz帯 電子レンジ
- 5.8GHz帯 マイクロ波方式ワイヤレス給電
ここでは高周波利用設備としての用途を挙げましたが、それ以外にも無線局として利用される場合もあります。
こちらも代表的なものを見ていきます。
- 27.12MHz CB無線
- 40.68MHz 微弱無線
- 900MHz帯 携帯電話、RFID
- 2.4GHz帯 無線LAN、Bluetooth
- 5.8GHz帯 無線LAN、ETC、レーダー
普段利用しているものが目白押しですね。
GPS帯
そしてもう一つ普段からお世話になっている周波数バンドが「GPS帯」です。
GPSは「Global Positioning System」の略語です。
周波数はL1が1.5GHz帯、L2が1.2GHz帯で運用されています。
GPSはもともとの信号レベルが低いため、CISPR25においても非常に厳しいレベルが要求されます。
ノイズレベルを下げるのも容易ではないので、GPS帯にクロック高調波が重ならないようにすることが一番の対策と言えるかもしれません。
おわりに
今回も雑多な内容となりましたが、EMCエンジニアとして知っておいたほうがよい周波数バンドについて紹介しました。
今回の内容に加えてバンドごとの電波の特徴わかってくると、EMC試験が何を意図して行っているかも考えられるようになってくると思います。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。