この記事では、AUKEY製のアイソレータを分解し、その中身について解説ています。
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アイソレータとは
アイソレータは、入出力間で絶縁を取るために使用される部品です。
絶縁の目的は2つあります。
破損防止
1つの通信機器の短絡によって全ての機器が壊れてしまうとシステム全体への影響が非常に大きくなってしまうため、機器間が絶縁されていることが重要です。
そのため、産業機器などの高い信頼性が要求される機器においては、機器間で絶縁を取るためにアイソレータが使用されます。
ノイズ対策
これは特に低い周波数の音が混入している場合に有効で、ノイズ成分を取り除くために信号ラインにアイソレータが使用されます。
またグランドを介したノイズの回り込み、いわゆるグランドループに対してもアイソレータは有効です。
例えば機器間でグランドの電位に差がある場合、グランドにノイズ電流が流れてしまうことがありますが、アイソレータを挿入することで抑制することができます。
分解調査
今回分解するアイソレータは、AUKEY というメーカーのものです。(現在は Amazonで販売されていませんが、似たようなものが多数存在します)
このアイソレータはオーディオ用で、低周波のノイズを除去するためのものです。
外観
外観としては、マットな感じで安っぽくはありません。
また各種の認証マークも表示されています。
分解
今回は、ヒートガンとホットカッターを使って分解します。
どうやら中の細長い基板には、コネクタとトランスしか実装されていないようです。
トランスには端子を保護するためなのか、絶縁を強化するためのものなのかはわかりませんが、ノーメックステープのようなものがグルっと貼り付けられています。
はんだ付けの感じを見ると、そこまで品質が良さそうな感じではありません。
回路構成
アイソレータの回路は、イヤホンジャックの左右のステレオ信号に対して、それぞれトランスを介して入出力間が接続されているだけです。
この回路において、入出力間でグランドが分離されていることが非常に重要で、これによって短絡に対しては電流経路を遮断しつつ、低周波のノイズに対してはトランスの伝送効率が低いためノイズが伝わりづらいようになっています。
減衰性能
アイソレータの性能としては、「絶縁性」と「ノイズの減衰量」が重要になりますが、ここではノイズの減衰量を挿入損失として測定しました。
測定条件
測定にあたっては、出力インピーダンスを1Ω、入力インピーダンスを 1MΩとし、周波数を 1Hz ~ 100kHzに設定しました。
印加電圧は 5Vです。
測定結果
最も低い周波数の 1Hzにおいて、約 40dB程度の減衰が見られます。40dBというのは 1/100に相当するので、かなり大きな減衰が得られていると言えます。
一方でハムノイズ(50Hz / 60Hz)に対しては、減衰量が 3~4 dB程度となっており、 1/3程度しかカットされない結果となっています。実際に耳で聞いたときに、この 3~4 dBがどの程度のインパクトがあるのかはわかりませんが、アイソレータ単体でハムノイズに対して有効とは言えない気がします。
ただし機器間でグランドループができている場合には、単純にグランドが分離されることによってハムノイズが低減されることもあるので、このあたりの効果については使用環境によるところが大きいです。
200Hz以上の周波数になるとアイソレータによる減衰は無くなり、入力と同じレベルの信号が出力されます。
このように減衰性能だけを見ると、アイソレータはハイパスフィルタと同じような傾向を示しており、減衰傾度が 20dB/decadeとなっていることから1次のフィルタと同等の性能と言えます。
ただしハイパスフィルタと違って、入出力間でグランドが分離されているので、ここがハイパスフィルタとの使い分けのポイントになります。
おわりに
今回は、AUKEY製のアイソレータを分解しつつ、アイソレータの用途と回路構成について
解説しました。
アイソレータは機器を保護や、グランドループの抑制には多大な効果を発揮しますが、一方で高周波のノイズに対してはほとんど何も効果はありません。そのため使用するにあたっては、対象となるノイズの周波数に注意して使用するようにしてください。
Amazonにて、類似商品が購入可能です。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。