イミュニティ試験のうち、破壊に至る可能性のある試験が「雷サージ試験」で、その中で最もメジャーな規格が「IEC61000-4-5」です。
そこで今回は「IEC61000-4-5」の試験内容について紹介しています。
動画はコチラ↓
雷サージとは
サージは「大きなうねり」という意味で、雷サージの意味するところは「雷による大きなうねり」ということになります。
IEC61000-4-5 試験においては、「電圧・電流」の大きなうねりということになります。
つまり、電子機器に雷が直撃すること(直撃雷)を想定した試験ではなく、機器に接続されているケーブルの電圧・電流が大きくうねること(誘導雷)を想定した試験になります。
誘導雷とは
IEC61000-4-5 では直撃雷ではなく、誘導雷を模擬した試験が行われます。
直撃雷はイメージしやすいかと思います。
一方、誘導雷は目に見えないものなので、イメージすることが難しいですね。
図で示されたように
➀直撃雷が発生することで
➁周囲の空間の電磁界の大きさが変化し
➂電磁誘導の作用によって、周囲の電線に大きな電圧・電流が発生します
この大きな電圧・電流のことを「誘導雷」と呼びます。
試験波形
IEC61000-4-5 試験では、電圧波形と電流波形が同時に規定された「コンビネーション波形」を用いて試験が行われます。
※Ed.2 と Ed.3 で波形の規定が若干異なりますが、意図することは同じです。
詳細はノイズ研究所のテクニカルレポート「IEC 61000-4-5 第3版 改訂発行の対応とその改訂詳細について」をご確認ください。
波形の特徴としては、立上り時間が「μs」オーダーであり、比較的緩やかな(遅い)立上りの波形です。
つまり、波形を周波数軸で見ると低周波帯の現象ということです。
実験結果からも、100kHz以下の電圧が支配的であることがわかりますね。
このあたりは、雷サージ対策部品を選定するうえで重要になります。
雷サージ発生回路
この回路の出力インピーダンスは「2Ω±10%」と規定されています。
ヒューズやバリスタの選定において、試験電圧からサージ電流を検討するときに参考にしてみてください。
印加方法
雷サージ電圧の掛かり方によって、印加方法が異なります。
ノーマルモードはライン間に、コモンモードはラインー大地間にサージ電圧を印加します。
また、系統側へサージ電圧が流れないように減結合回路網(CDN)を使用します。
IEC61000-4-5 Ed.3 においては、EUTの電流容量によってCDNの定数を変更することになっていますので、詳細は規格書を確認してください。
試験配置
他の試験と異なり、試験機とEUTの距離や接地線の長さなどの規定はありません。
試験波形が低周波が支配的なので、あまり気にしなくてよいのでしょう。
おわりに
雷サージ試験の内容について、基本的なことからご紹介しました。
試験の実施にあたっては、規格を正しく理解しておくことが重要です。
規格書をお持ちでない方は、「kikakurui.com」や試験機メーカーのサイトで内容を確認しておきましょう。
https://kikakurui.com/c6/C61000-4-5-2009-01.html
他の「IEC61000-4シリーズ」の試験については、下記のリンクからチェックできます。
雷サージの対策方法について知りたい方は、こちらの記事からご確認ください。
実際に雷災害で困られる方は、電源タップやノイズフィルタを見直してみるといいかもしれません。
ほとんど電子機器は一般的な雷サージ試験をクリアできる程度には対策されていますが、雷害の多い地域においては不十分なケースが多いのが現実です。
電源タップやノイズフィルタであれば、電子機器を分解することなく後付けで対処できるので、現場レベルでの対策に最適です。
機器の「電圧・電流」に適した部品を探してみてください。
今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
[…] ・https://engineer-climb.com/%e9%9b%b7%e3%82%b5%e3%83%bc%e3%82%b8%e8%a9%a6%e9%a8%93%e3%80%90iec61000-4… […]
ばやしん様
HP拝見しました。
参考文献として、掲載いただき光栄です。
お互い有益な情報提供できるように頑張っていきましょう。
ばやしん様のページはこちらです。