EMC試験

エミッションとイミュニティの関係性

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EMCとは「Electro Magnetic Compatibility」の略で、日本語では「電磁環境両立性」を訳されます。

このEMCといる単語には、以下の意味が含まれています。

  • EMI:エミッション
    (自身が発する電磁波によって他の機器が誤動作・故障しないこと)

  • EMS:イミュニティ
    (周囲の電磁波によって自身が誤動作しないこと)

何となくの意味は理解できますが、ぼんやりしていて具体的なイメージはつかみにくいですね。

そこで今回はEMIとEMSそれぞれの意図することについて紹介します。

 

EMI:エミッション

一般的にノイズの試験をするという場合、このEMI(エミッション)試験を指すことが多いです。

エミッション試験では自身が発するノイズが規格の限度値を満足するか確認します。

エミッション試験の例
出典:Tech Web

エミッションにおける限度値は機器の種類によって異なります。

例えば、テレビやパソコンなどの「マルチメディア機器」と呼ばれるものは「CISPR 32」という規格で限度値が規定されています。

その他にも、照明機器、家電機器、産業機器、医療機器など、機器の種類によって限度値が定められています。

(規格の詳細については別の記事で紹介します。)

これらの限度値は、放送波を受信するためのアンテナ(例えば家の屋上についているテレビ用のアンテナ)に対して妨害を与えないために定められたもので、一般的な電子機器が誤動作するレベルよりはるかに低いレベルで規定されています。

つまりこの限度値を下回ることで、ノイズの影響を受けることなく家庭内で放送用の電波を受信でき、かつ周囲の電子機器を誤動作させないと言えます。

 

EMS:イミュニティ

イミュニティ試験では、機器のノイズに対する耐性を試験します。

ノイズの種類としては、静電気、雷サージ、放射イミュニティ(放射電界)など多岐にわたり、多くの場合 IEC61000-4シリーズで規定された試験を行います。

出典:図研テック

イミュニティの場合、規格への適合を試験レベルにおける機器の動作状態によって判定します。

  • 判定基準A オペレータの介入なしに、意図したように動作継続する
  • 判定基準B 試験中に性能は低下するが、試験後にオペレータの介入なしで意図した動作に復帰する
  • 判定基準C 試験後に、オペレータの操作を介して機能が回復する

イミュニティの試験項目ごとに判定基準のレベルが規定されています。

出典:EMC & Safety 適合コンサル

各試験で基準以上のノイズ耐性を持てば、ある一定の範囲で周囲からのノイズで誤動作しないと言えます。

 

エミッションとイミュニティのレベルの差

エミッション試験とイミュニティ試験でそれぞれのノイズ性能を担保していますが、どれほど妥当なものなのでしょうか?

ここでは「放射エミッションの限度値」と「放射イミュニティの試験レベル」を比較して考えてみます。

縦軸は対数表示となっています。

200MHzにおけるエミッションの限度値とイミュニティの1V/mのレベルを比較すると、80dB の差があります。

80dBとは 10,000倍のレベル差があるということです。

つまり、イミュニティの試験レベルに対してエミッションの限度値は非常に小さいため、他の機器から放射するノイズによって誤動作はほとんど起こらないと言えます。

これがエミッションとイミュニティを包括した、EMC(電磁環境両立性)の基本的な考え方になります。

 

おわりに

エミッションの限度値とイミュニティの試験レベルをもとに、EMCの考え方をご紹介しました。

EMC試験を行うときには規格の限度値ありきで考えがちですが、改めてその値を見直すことでEMC性能がどのようにして担保されているか知ることができます。

ただし実際には、エミッションの限度値を満足していても受信障害が起こることもありますし、反対にイミュニティ性能を満足していても現場で誤動作することはあります。

このような場合、トラブルの現場とEMC試験の状況が異なることがほとんどです。

そういった時には、状況の違いに着目してトラブルの原因を探っていくと何かヒントがあるかもしれません。

 

今回は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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