EMC村の民
~iNarte EMCエンジニアへの道~
EMC規格

不要発射とEMCの関係性

 

電波法において、規定された帯域外での放射を「不要発射」と呼びます。

言葉の通り、通信に不要な電波の発射という意味です。

 

不要発射は電波の効率的な利用を阻害し、通信を妨害する要因となります。

この観点で見ると、EMCと通ずるところがありますね。

 

そこで今回の記事では、不要発射について考えてみます。

 

 

不要発射の定義

電波は搬送波周波数をもとに、変調によって一定の帯域を持ったスペクトラムとして放射されます。

このスペクトラムのうち、必要な周波数帯域を以外のスペクトラムを不要発射と呼びます。

不要発射には変調に伴う側帯波や高調波のほか、PLLに伴う周波数やローカル発振周波数の漏れなども含まれます。

 

なお無変調の状態での不要発射の強度を「スプリアス発射の強度」としています。

スプリアス発射は無変調での不要発射なので、搬送波の高調波を指します。

電波法においてはもともとはスプリアス発射の強度が規定されていましたが、実際の運用においては変調をかけるので、不要発射の強度が規定されるようになりました。

 

 

不要発射の測定方法

不要発射の測定周波数帯域は、搬送波の周波数によって決まります。

表4.2

 

測定方法や測定条件については、電波法無線設備規則で規定されています。

表 無線設備規則 別表第3号 7条関係

 

測定方法は必要な機器さえあれば難しくありません。

 

送信機の出力にアッテネータを接続して信号を減衰し、スペクトラムアナライザで受信レベルを測定します。

アッテネータの減衰量やケーブルロスは既知なので、測定値を補正することで送信機の不要発射特性を測定できます。

 

送信機は規定の変調状態で動作させます。

例えば、ディジタル変調の場合は適当な繰り返し長のPN符号(擬似ランダム符号)、アナログ変調の場合は適当な周波数特性をもったホワイトノイズで変調をかけます。

 

 

不要発射とEMCの関係

ではEMCとの関わりはどうなのかを考えてみます。

 

ここでは測定方法に着目していきます。

先述の不要発射の測定方法を見ると、不要発射は送信機の出力端子でのレベルを測定しています。

一方EMCの場合、放射エミッションノイズとして供試品が動作した状態で空間に放射される電波を測定します。

ここが大きな違いです。

 

電波法はあくまでも電波の利用をベースに考えられている規格なので、出力端子以外からの電波の放射は考慮されていません。

しかし、EMCは機器全体として通信を阻害しないことを目的としているため、出力端子以外からの電波の放射も考慮しています。

 

EMCでは電波を利用する機器をCISPR11グループ2にて、以下のように定義して規格の対象としています。

材料の処理、検査又は分析の目的で、電磁放射、誘導性結合及び/又は容量性結合の形で周波数範囲 9 kHzから400 GHz の無線周波数エネルギーを意図的に発生して使用、又は使用のみを行う全てのISM RF装置を含む。

 

そして、グループ2の機器の中にももちろん「クラスA」と「クラスB」に分類されます。

クラスA 装置は、家庭用の施設及び住居用に使用する目的の建造物に給電する低電圧電力系統に直接接続する施設以外の全ての施設での使用に適した装置。
クラスA装置は、クラスAの許容値を満足すること。

クラスB 装置は、家庭用の施設及び住居用に使用する目的の建造物に給電する低電圧電力系統に直接接続する施設での使用に適した装置。

 

CISPR11の限度値を見ると、特にクラスAの機器は帯域ごとに細かく限度値が規定されていることがわかります。

CISPR11_Gr2_ClassACISPR11 グループ2 ClassA 限度値 出典:CISPR11国内答申

 

EN55011_limit_lineCISPR11 限度値比較 出典:アナログ・デバイセズ

 

このことから、EMC規格は電波の不要発射に対して様々なケースを想定して限度値が規定されていることがわかります。

 

 

おわりに

電波法における不要発射とEMC(CISPR11)の関係について考えてみました。

どちらの規格も不要な帯域でのレベルを規定していますが、以下のような違いがあります。

  • 不要発射は、機器の出力端子(電力)のレベルとして規定
  • EMCは、機器全体での放射エミッションレベル(電波)として規定

 

一見同じようなものにも、違いがありますね。

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

ABOUT ME
エンジャー
EMCやノイズ対策に関する情報発信を日々行っています。 ( iNarte EMC Engineer、第一級陸上無線技術士)

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