EMC村の民
~iNarte EMCエンジニアへの道~
EMC設計

ノイズ対策におけるスペクトラム拡散のメリット

 

クロックノイズなどの狭帯域ノイズは、一般的にピーク値が高く、また常に出続けているためQP値やAV値も高くなる傾向があります。

 

こうした狭帯域ノイズを対策するために利用されるのが「スペクトラム拡散」です。

 

今回の記事では「スペクトラム拡散」の原理やメリットについて紹介します。

 

 

スペクトラム拡散とは

もともとは無線通信における変調技術のひとつです。

有名どころとしては「無線LAN」でもこの技術が使用されています。

 

特徴としては、耐ノイズ性・秘匿性に優れています。

スペクトラム拡散の基本構成 出典:Futaba

 

搬送波にFM変調をかけたあとに、さらに拡散符号を用いて広帯域化させる、つまりスペクトラム拡散しています。

②のようにスペクトラム拡散した信号はピークレベルが低下しますが、送信側と受信側が共通の拡散符号を用いることで、③のように同じ帯域にノイズが混入しても元の変調信号を復調することができます。

このときにノイズレベルが高かったとしても、④のように復調したときにノイズレベルが低くなるため無視できます。

これが耐ノイズ性が高いと言われる所以です。

 

 

スペクトラム拡散のメリット

ノイズ対策としてスペクトラム拡散を使用すると、ピーク値が元のレベルよりも低くなります。

スペクトラム拡散の効果スペクトラム拡散の効果 出典:マイナビニュース

 

高調波のピーク値も基本波と同様に下がります。

これがスペクトラム拡散を使用するメリットのひとつです。

 

さらにスペクトラム拡散で重要なことは、周波数が常に変動しているということです。

スペクトラム拡散波形スペクトラム拡散波形 出典:テクトロニクス

 

上図はスペクトラム拡散したときの、各周波数の値と頻度を色で表した図です。

頻度が高いと赤色で、頻度が低いと青色で表示されます。

 

各周波数でピーク値に近い箇所を見ると、概ね青色や黄緑色で表示されています。

ピーク値に近いレベルを示す頻度が低いということです。

頻度が下がると、どのようなメリットが有るのでしょうか?

 

頻度と関連するものといえば「QP値」や「AV値」です。

QP値に関しては以前の記事でも紹介していますが、ピーク値が高くても頻度が低ければQP値は小さくなります。

https://engineer-climb.com/qp%e5%80%a4%e3%82%92%e8%80%83%e3%81%88%e3%82%8b/

つまりノイズ対策においてスペクトラム拡散は、EMI規格に適合するためのテクニックと言えます。

検波器ごとの波形頻度とレベルの関係 出典:ローデシュワルツ

 

 

おわりに

スペクトラム拡散の「原理」と「ノイズ対策におけるメリット」について紹介しました。

ノイズ対策のテクニックとして非常に有効であるため、ぜひ習得しておきたい技術ですね。

 

スペクトラム拡散について理解を深めるには「無線通信とディジタル変復調技術 」がオススメです。

無線通信の変調に関する内容がメインですが、スペクトラム拡散の方式についても丁寧に解説されているので一読の価値があります。

なんと言ってもAD社の石井先生の書籍なので、内容は間違いありません。

 

ノイズ対策と関連するところでは「電源系のEMC・ノイズ対策技術」があります。

電源回路でスペクトラム拡散する場合はもちろん、考え方はその他の回路にも適用可能です。

ぜひ参考にしてみてください。

 

今回は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

ABOUT ME
エンジャー
EMCやノイズ対策に関する情報発信を日々行っています。 ( iNarte EMC Engineer、第一級陸上無線技術士)

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